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がん遺伝子治療に新技術 信大と東芝共同開発

 信州大学(本部・松本市旭3)と東芝(本社・東京都港区)は、がんの遺伝子治療で、治療遺伝子を内包した極小のカプセル「生分解性リポソーム」をがん細胞に選択的に導入する技術を開発した。動物実験により腫瘍の増大を抑制する効果が示されたことから、従来の方法では治療が難しいがんに対する次世代の治療法として実用化を目指していく。

 遺伝子治療は、患者の細胞に治療遺伝子を入れて細胞レベルで治療する精密医療となる。現状は遺伝子の運搬にウイルスを用いることが多く、安全性や標的性に課題もある。共同研究ではウイルスを使わない遺伝子治療として、東芝が独自の脂質で合成した「生分解性リポソーム」を運搬体とする。細胞内でのみ分解する直径約100ナノメートルの容器で、狙った細胞の特性に応じ脂質の組成を制御することでがん細胞にだけ遺伝子を導入できる。
 リンパ球の一種、T細胞ががん化したものを標的に合成したリポソームの接触実験では、リポソームの取り込み量、内包遺伝子の治療効果をもたらすタンパク質の合成量ともに正常細胞よりがん細胞が顕著に多かった。動物実験では、マウスに血液がんの細胞を移植し、細胞を殺す治療遺伝子を内包したリポソームを投与した群と、無害な遺伝子を内包したものを投与した対照群を比較した。対照群は3週間で全身にがん細胞が広がったのに対し、治療遺伝子投与群は増大が抑えられ、治療遺伝子ががん細胞に効率的に届くことが示された。
 リポソームの組成を変えればあらゆるがんに応用できるとし、信大医学部小児医学教室の中沢洋三教授は「腫瘍に対して指向性を付与したこと、非ウイルスの遺伝子治療のコンセプトを実証できたことは大きい」と意義を話す。
 共同研究は現在、基礎開発にめどがついた段階で、3年後の臨床試験入りを目指していく。同様の治療法で臨床試験に入ったものはまだないという。

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