連載・特集

2020.5.30みすず野

 白磁の皿に描かれた藍色の野の花に癒やされる。ほんのりピンク色がかった秋桜の絵柄が、鬱屈した心をひととき解きほぐしてくれる。篠田明子さんが作る器のファンなのだ。20年近く前に買い求めたご飯茶わんは今もわが家の食卓を彩る。松本の個展会場を訪ねた◆陶歴39年。祖父から父、娘へと3代にわたる染付の技法を受け継ぐ一方で、釉薬や土を変えて独自の境地にも挑む。隣の区画でも眼福にあずかった。木曽福島で八澤春慶塗の伝統を守る手塚勘久さんの漆器だ。細長い小判形のわっぱが特に目を引き、ヒノキの木目にほれぼれした◆日本産漆にこだわる。さらっとしていて、へぎ板の断面を透かせることができると。13年前に木曽町内に植えたウルシの木からそろそろ漆が採れそうとか。親木が南木曽で育った素性の分かる木だといい、漆も木も木曽産の器が見られる日も遠くない。鑑定団なら「2代目勘久の仕事に間違いありませんね」◆日頃いかに文化や芸術が気持ちを潤し、支えてくれていたかに思いを致す。美術館が開館と聞き、ほっとする心情とも通じるところがあろう。2人の作品展は井上百貨店で6月2日まで。

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