連載・特集

2020.5.23みすず野

 「雨が降ろうが、やりが降ろうが」と言う。すかさず「普通やりは降らんやろ」と横やりが入る。戦国時代の戦場ではあるまいし。高校球児たちは突然やりが降ってきたような心境か。夏の甲子園が中止になった◆「掛ける言葉がない」と指導者やプロ野球選手が声を絞り出す。甲子園の土を踏んだ経験者でさえそうなのだから、門外漢で弱小柔道部出身の小欄はなおさらだ。紙面を眺めて「積み重ねた努力は無駄でない」といった励ましのコメントに大きくうなずくのみ◆映画監督・熊井啓さんの謦咳に接したことが一度だけある。安曇野の5町村合併に向けた論議が進められていた時で「著名人に郷土への提言を」と東京で開かれた座談会の席だった。熊井さんは「50年、百年後の視点で」と強調された。そして「時間がたてば見えてくる。若い皆さんの責任は重い」とも◆球児に限らず若者の集大成の場が失われた。今は何の慰めにもなるまいが、こう切り替えられないだろうか。他の世代ができない貴重な経験をした。千載一遇のチャンスだ。あの悔しさがあったからこそ今の私がある。そう言える日がきっと来る。熊井さんの忌日に。

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