連載・特集

2020.5.12みすず野

 花の旅、と言っても花を見に遠い所へ列車を乗り継いで行ったり、イベント中止になっている名所にあえて出かけたり、というのではない。近郊の林の中などにひっそり咲く花を訪ねてみる。そんな小さな花旅を早春から始めた◆コロナ禍は日常のあらゆるところに及ぶ。飲食店、中小企業、大企業、スポーツや文化団体、そこに携わり、働くすべての人々、のみならず学校休校による子どもたち、大学生に至るまで、そのマイナス影響たるや、計り知れないものがある。一日も早い終息を願ってやまないが、終息後の立ち直りにも時間を要するにちがいない◆ふさぎがちになる気持ちを、少しでも明るく保つのに、身近な自然に親しむというのは悪くない。朝日村のカタクリ、塩尻市のミズバショウ、安曇野のワサビ田、シュンラン、美ケ原高原のイカリソウなど、これら訪ねた場所は「3密」どころか、ほとんど人がおらず、野の花と対話することができた◆増村征夫さん(故人)の『信州で出会いたい花50選』(新潮社)が格好の案内書。「野の花の癒やしを忘れていた自分に気づかされる」とは、優しかった増村さんの言葉だ。