連載・特集

2020.05.20みすず野

 先月、本欄で「60年安保」を書いたその日、元松本市中央図書館館長・手塚英男さん(松本市)が新刊の自著『薔薇雨 1960年6月』を、知り合いを介して届けてくださった。60年前の60年安保闘争当時、手塚さんは東大生で、まさに当事者だった◆しかも6月15日、国会構内での機動隊との乱闘の中で命を落とした東大生、樺美智子とは同学年同学科。最初は共にスクラムを組む仲間であった。やがて立場を違え、別離となるのだが。『薔薇雨』は小説の形を取っているとはいえ、手塚さんの生々しい体験をベースとし、時代の貴重な証言と言っていい◆あとがきで、手塚さんは雨のそぼ降るあの夜をこう記す。「あなたには長い人生があるわ。でもわたしには、もう明日はないの。闇の中に間違いなく『彼女』の悲鳴を聞きました」。その悲鳴を決して忘れることなく、手塚さんは郷里松本市の職員となった後、社会教育活動などに力を注いで今日に至る◆60年安保は、戦後最大の市民運動だった。「平和と民主主義を築こう、とのその後の大衆運動の原点。60年前の昔語りとして風化させてはならない」と手塚さんは述べている。

連載・特集

もっと見る