連載・特集

2020.4.4みすず野

 ラジオ体操の始まりが出勤時刻と重なる。家を出ると例の元気な歌声が耳に飛び込んできた。冬季の中断明けで久しぶりに境内に集まった人たちが腰をひねったり、胸を反らせたり。人と人の間隔がいつもよりも空いているように見えたのは気のせいだろうか◆早春賦まつりが中止になった。穂高川のほとりの歌碑公園に響く歌声を今年は聞けない。身近な催しとあって東京五輪・パラリンピックの延期よりも胸にこたえた。新緑の国営公園を彩る音楽祭も大型連休中の開催が見送られ、浮き立つはずの春の訪れに寂しさが募る◆誰もが不安で疑心暗鬼になっている。あちらこちらで飛び交うとげとげしい言葉が人の心と口を閉ざす。紙面で小児科医の笠井正志さんが「感謝と信頼」を訴え、三四六さんも「誰かのためになる行動」を呼び掛けていた。思いやりの心でこの難局を乗り越えるしかない◆週明けには子供たちが学校に戻ってくる。高校の部活動も再開された。境内のラジオ体操や桜の花と同様のいつもの春と、普段とは異なる春が隣り合う。歌うのは不得手なのでもっぱら聴くほうだが、一人一人が心に早春賦の歌声を持ちたい。

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