連載・特集

2020.3.22みすず野

 春が来たら東京で百済観音を拝めると楽しみにし、日々の励みにもしてきた展覧会の開幕が延期された。上京のついでに大切な人への贈り物を選ぼうと企てていたからショックが重なる◆新型ウイルス禍で大勢の人が生活を脅かされ、大変な思いをしている。きっと「その程度で」と顔をしかめられるだろう。中萱の公園でボール遊びに興じる親子の姿や、犀川の河川敷でスティックを振り「もともとマレットゴルフは無観客だから」と話す人の言葉に笑顔や元気をもらう◆仕事で一つ大きなミスをした。言い逃れできない失態に取り急ぎ迷惑を掛けた先方へ電話を入れる。さぞ厳しい叱責を浴びせられると覚悟していたら「謝ってもらったので、これで今回は終わりにしませんか」と返ってきた。受話器を置く前のあいさつが涙で詰まって言葉にならなかった◆当たり前と思っていたことがそうではないと教えられる。余儀なくされた日程の変更に戸惑う一方で、見失ったり忘れかけたりしていたことにも気付かされる。ポストを開けると友人から食事の誘いが届いていた。それぞれの喜びと楽しみを探して。人の優しさが身に染みる春だ。

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