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街の老舗パン店90年で幕 松本・マルショウ3月末で

 松本城のすぐ西にある"街のパン屋さん"として親しまれてきた老舗「パン工房マルショウ」(松本市城西2)が3月31日、昭和5(1930)年の開業から90年間にわたる営業に幕を下ろす。毎日約100種類の多彩なパンを作ってきたが、店周辺の市道拡幅や後継者がいないことから、2代目社長の百瀬靖夫さん(69)は店を畳む決意をした。常連客などから惜しむ声が寄せられる中、街なかの名店がまた一つ姿を消す。

 マルショウは靖夫さんの祖母・千さゑさん(故人)が現在の大手4に開いた。店名は千さゑさんの夫・一正さん(故人)と実家の魚屋・丸吉から1字ずつあやかった「丸正」とした。開業時の納入先は官公庁が主だったが、次第に家庭の食卓にもパンが普及し始め、店が手狭になり、昭和32年に現在地へ移転した。
 松本県ケ丘高校、東海大学を卒業後、新宿中村屋などで修業し26歳で帰郷した靖夫さんは「朝は午前3時に準備を始め、夜は家族と夕食を取ってから店に戻り、遅い時は日付が変わるころまで働いた。支えてくれた妻には感謝しかない」と振り返る。
 平成2年にかまどを思わせるれんが造り外観の店構えとし、出来たてを届けるための隣接工場を設けた。戦後に売り出し始め、今も店頭に並ぶ「エンリッチ」はロングセラー商品だ。ふわふわのコッペパンにピーナツクリーム、イチゴジャムバター、こしあんバターなどを挟み、多い時は一日1500個も売れた。
 靖夫さんは「時代ごとに流行があり、お客さんの好みもそれぞれだったが、心掛けてきたのは安心安全においしく食べてもらうこと」と胸を張る。生地づくりに欠かせない水は分子レベルで研究し、米こうじの菌を利用してソフトで香り立つようにするなど商品開発に力を入れてきた。
 閉店を知ったお客からは「やめないでほしい」「困ります」との声が届く。靖夫さんは「今の工場レベルと商品の質を維持し、城西周辺でもう一度というのは難しい」と理解を求めつつ「90年間仕事をさせてもらえたことにただただ感謝しかない。最後まで付き合ってくれるスタッフと駆け抜けたい」と語った。

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