連載・特集

2020.2.23みすず野

 興福寺の国宝五重塔が120年ぶりに修理されるそうだ。猿沢の池に映るさまが奈良八景に数えられる。京都・清水寺近くの東大路通りに八坂の塔が望める交差点は一つだけ。観光バスならガイドが「一瞬ですよ」と注意を促す◆松本城の天守が街なかでも見えたのはいつ頃までだろうか。昨年「気ままに文学散歩」の取材で松島橋から見えた時は驚いた。知らなかった。戦時中、島立に疎開した作家の宇野浩二が奈良井川の向こうに〈わびしく、眺められる〉と書いている。今は見えないと思ってカメラを向けると◆春風亭昇太さんのようにお城に詳しくないけれど、知る限り現存天守12城の多くは高台に立つ平山城だから市街から見えやすい。姫路も高知、伊予松山、彦根も。平城の松本城だとそうはいかない。本町通りからの眺めを守ろうと訴える有志の活動に、市民の反応と関心はどうだろうか◆再び話を古都へ。法隆寺と法起寺、法輪寺の「斑鳩三塔」を1カ所で見られる場所があった。しかもわずかでもずれると、人工物に視界を遮られる地点だった。今も健在か心配だ。長年培われた景観を後世へと残すには、ずくが要る。

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