連載・特集

2020.2.16みすず野

 受験した大学の合格発表を見て校門前の郵便局に飛び込んだ。電話より電報と考えたのだ。「コマクサノハナヒラキケリ」と用紙に書いたところ、よほど字が拙かったのだろう。窓口の人が間違えて「ヒキニケリ」と打ってしまった◆大学入試の合格発表が始まる頃か。インターネットの時代に「合否電報」の命脈やいかに。ホームページや電子メールでたちまち伝えられ、バイクのエンジン音が近づく気配や「○○さん、電報です」の声にどきどきした思い出は遠い過去の遺物となっているとしたら、少し寂しい◆平成世代のために解説すると、掲示板を見に来られない遠方の受験生が利用した。郵送より早く着く。知られた「サクラサク」のほか、学校ごと合否の文言に工夫もあった。信州大学は合格がコマクサの花開くで、不合格だと「シナノジハユキフカシ(信濃路は雪深し)」だった。桜よ咲け。たとえ散っても、いつかきっと咲く◆40年近く前になる。電報を受け取った家人は意味不明の文面に首をかしげながらも「引きにけり」だから不首尾だと思った。喜色満面で帰った息子を哀れんで「また頑張ればいい」と慰めてくれた。

連載・特集

もっと見る