連載・特集

2020.2.13みすず野

 人は誰しも他人にひがんだり、うらやんだりする。それが時に口をついて出る。プロ野球界で戦後初の三冠王に輝き、生涯一捕手を貫いて45歳までプレー、堂々たる数字を残し、監督としても4度のリーグ優勝、3度の日本一を達成した野村克也さんにして、そうだった◆ひがんだ相手は巨人の長嶋茂雄、王貞治。現役時代「花の中にはヒマワリ(ONのこと)もあれば、ひっそり咲く月見草(自分のこと)もある」と言い、以後代名詞に。京都の貧しい家に育ち、高校時代は全くの無名、南海にテスト入団し、一度は戦力外通告を受けた◆投手の癖を徹底的に研究して打撃力を向上させ、正捕手に定着した。この研究こそ、監督時代の「ID野球」の基礎となった。ぼやいたり、つぶやいたりする中から数々の名言も残した。「組織はリーダーの力以上には伸びない」「好かれなくてもいいから、信頼されなければならない」◆「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」は座右の銘だった。愛妻に先立たれ、昨年出演したテレビ番組では「寂しい」と、老いの孤独をさらけ出すなど、愛すべき人であった。84歳で不帰の客に。