連載・特集

2020.1.24みすず野

 「最近の若い人、松本清張を知らないんですよ」「えっ!? そうなんですか」「電車の中で、若者たちの会話が耳に入ってきてわかった」「...」「君らが知ろうとしている人は、昭和の大作家松本清張だよ、と教えてやりたかった」◆本紙コラムニストの小澤幹雄さん(東京)との会話である。しばし清張談議となり、清張は初期の短編に傑作が多い、清張が半生を過ごした九州小倉に行ってみたい、そこの北九州市立松本清張記念館を訪ねてみたい、で思いが一致した。清張は『或る「小倉日記』伝』が芥川賞を受賞し、認められる◆昭和28(1953)年1月のことで、新聞記者が取材に来るまで本人は知らず、「誤報ではないかと思ったくらいで、実感が無かった」そうだ。読み返すと、この短編にのちの清張のすべてが込められている、と気づかされる。史実を民俗学的手法で丹念に調べ、それを踏まえたうえで、大胆に虚構を加えて物語に仕立てる◆主人公は一介の、支配される、虐げられる側の人間で、これもずっと清張作品に貫かれる。若いころ面白いだけで読んでいた清張が、いまになって、時代背景も含めてわかってきた。