政治・経済

松本市の菅谷市長 ぶれずに勇退の道選ぶ

 松本市政を4期16年導いてきた菅谷昭市長(75)が来年3月の任期満了で引退することを表明した。時代の先を読み、健康寿命延伸都市や食品ロス削減などの施策で国を動かし、大手シンクタンクの客観的評価を得て「役割を果たし終えた」と語った。IT(情報技術)社会の進展による時代の変化もあり、引き際を捉えた引退表明は勇退と言える。

 菅谷市政の船出は決して順風満帆というわけではなかった。
 強い政治力でまつもと市民芸術館や福祉ひろばの整備などを実現させた前市長と比較され、ソフト事業重視の菅谷市政は「顔が見えない」などと批判を浴びた。身体だけでなく地域や経済などあらゆる分野の健康を目指した健康寿命延伸都市構想を2期目に打ち上げた際には、当時の市議会議員さえ理解が追いつかなかった。
 「私は絶対にぶれませんから」。菅谷市長は事あるごとにそう語っていた。自分と職員を信じ、批判を受けても信念を曲げない姿勢は、医師や市長である以前に「哲学者」と表現する人もいた。
 今期限りで引退するという思いはずっと心にあった。非公式の場での発言には時折、引退をにおわせるニュアンスが混じった。平成29年、全国主要都市の成長可能性ランキングで松本市の総合8位が報じられた際は「これで僕の(引退の)花道ができた」とうれしそうに語っていた。
 5期目の続投を願う市民の声もある中、菅谷市長はぶれずに引退を選んだ。残りの人生を考えたとき、ライフワークとしている原子力災害関連の支援活動に身を投じたいとの思いもある。8日の市議会臨時会で引退表明した直後、報道陣に語ったように、菅谷流「男の美学」を貫いた。

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