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災害は忘れたころに 台風19号千曲川被災地ルポ

団地の泥を撤去する住民たち。奥に千曲川の堤防があり、越水して団地に泥水が流れ込んだとみられる

 台風19号の大雨による千曲川氾濫で浸水した須坂市北相之島で1人暮らしの祖母(93)の自宅を訪れ、被災した現地を取材した。北相之島は、13日に堤防が決壊し、大規模な浸水被害が発生した長野市穂保地区のちょうど対岸(東岸)に位置する。一帯を浸していた水はすでに引いていたものの、周りの区画整理された住宅団地の道路には粘着質の泥が大量に積もり、家々の中は泥だらけになっていた。住民たちは総出で、泥や汚れた家具の撤去作業に追われていた。

 「ばあちゃんの家が浸水した。仕事が一段落したら、様子を見に行ってくれ」。須坂市の親戚から連絡を受け、長野市中心街にある市民タイムス長野支局から東に約13キロ離れた祖母宅へ16日、車を走らせた。被災地へ近づくにつれて道路は茶色に染まり、浸水した痕跡が至る所に見られた。泥から漂う異臭が鼻についた。
 千曲川の堤防道路には停車した車が列をなし、多くの人が復旧作業の応援に駆けつけていた。堤防から河川敷を眺めると、泥に埋もれたリンゴの木や水たまりがあちこちに確認できた。堤防の草は全て川の外側に向かって倒れていて、越水したことがうかがえる。
 平屋の祖母宅は床上20センチの浸水だった。色とりどりの花が植えられていた庭は全て茶色の泥に覆われていた。すでに親族たちが片付けに訪れていて、口々に「大変なことになった」と言い、泥だらけになりながら作業を進めた。団地内の道路にはショベルカーなどの重機も見え、トラックに泥を積んでいた。
 遊歩道を挟んだ向かいの住宅は13日夕に火事に遭い、無残な姿となっていた。住民が避難した後に出火したため、消火作業が難航したという。近所の田中康栄さん(74)は「洪水に火事に、もう散々だよ。いつになったら掃除が終わるか分からないし、もうこりごりだ」と途方に暮れていた。
 祖母は近くの親戚宅に避難して無事だった。避難時に自宅から持ち出した祖父の位牌を胸に「こんなことが起こるなんてね...」と力なく語った。千曲川と支流の八木沢川に囲まれた北相之島は昭和50年代後半にも水害が発生し、祖母宅も床下浸水の被害に遭っている。祖母は当時のことを思い出したのか、「災害は忘れたころにやってくるんだね」とうつむいた。