連載・特集

2019.10.27みすず野

 居酒屋で独り飲んでいると、後ろで「もっと早く決めてほしかったよな」「その通り!」と若者たちの声がした。指示を二転三転させた上司への不満が噴出しているらしい。数が少なくても人から上司と呼ばれる身には耳が痛い◆今年1月に亡くなった作家・橋本治さんの『上司は思いつきでものを言う』(集英社新書)が出たのは15年前。創業1500年の埴輪製造会社が突然コンビニを開業するという突拍子もない例え話で、上司と部下の思考の違いや日本の会議の構造を解き明かしてみせた◆コンビニを始めるかは別にして、何事にもスピード感が求められる時代と言えそうだ。台風の接近に伴う計画運休や催しの中止は英断だった。もしも運行・実施していたら結果的に非難は免れなかった。上に立つ人はアンテナの感度を上げ、素早く判断しなければならない◆「部長の決断はいつも遅いんだ」と、くだんの若者の怒りは収まらない。自省しながら耳を傾ける一方で、ちょっとした失敗も「悪いね、ワリーネ・デートリッヒ」で済ませられなくなった不寛容な世情を少し窮屈にも思う。そういうことを言うからまた不平の的になる。

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