連載・特集

2019.9.13みすず野

 残暑の厳しい日が続くが、きょうは「中秋の名月」である。旧暦8月15日の月を指し、文字どおり秋の真ん中の月。この夜に昇る月は、澄んだ秋空に映えて美しく、古来日本人は、団子や芋などを供えて月見を楽しんだ◆南国では、稲刈り期と重なることから、取れたての稲穂を供え、豊年祭として祝う地域も多いという。里芋の子芋を皮をむかずにそのまま茹で、食べるとき、着ている衣を脱がすようにむくことから、これを「衣被」と呼んだ。月見の供え物の一つ。俳句の季語にもなっている。「ほこほこと歯にやさしさや衣被」(河野静雲)◆旧暦時代は、月の満ち欠けを基準にしていたから、月を暮らしの中心に置き、信仰の対象でもあったのだが、いまは太陽が中心なので、月にあまり関心を払わなくなってしまった。中秋の名月や満月のときくらい、月をめでる時間を持ちたいもの。「良夜」という言い方もある◆古く中国の詩に詠まれており、月があまねく光り、清明な夜のことである。そんな夜が明けるのが惜しいと思うのを、「可惜夜」と言うとか。さて今夜、名月が眺められればいいけれど、この時季は意外と難しい。