連載・特集

2019.9.11みすず野

 欧米に追いつけ追い越せの経済成長社会の次に、私たちは成熟社会を築かねばならない、と言われた。成熟社会とは、物心の豊かさを実感できる、幸せな超高齢社会を指すと思われるが、成熟に向かっているどころか、逆のような気がしてならない◆寒気を覚える大事件が時々起きるし、どんな手を使ってもカネをだまし取る特殊詐欺は後を絶たない。格差が広がり、カネの力は経済成長社会より増した。老後不安はいくつになっても働き続けることを強い、多くの人が中流から下流に落ちこぼれまいと、懸命にあがいている。幸せな長寿社会など夢のまた夢?◆経済成長社会のときのほうが、これでいいのだろうか、という反論、別の道があるはずだとの実践があった。真に生きるための努力というか、生き方を探求する人たちが、もっといたのではないか。そこで『老子』を手にしてみる。たった5000語、日本語にして原稿用紙30枚ほどの本である◆「足るを知る者は富む」「柔弱は剛強に勝つ」「多く蔵すれば必ず厚く亡う」などの言葉に、ヒントを見いだせるような気がする。遅ればせながら、成熟社会をつくってゆきたいもの。