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100年余の歴史刻んだ庫裏解体へ 塩尻市洗馬の長興寺

重厚な木造建築の庫裏。盆明けには解体工事が始まる
 明治41(1908)年の大火の後に建てられ、本堂や寄り合い所としても使用されるなど100年余にわたって歴史を刻んだ塩尻市洗馬の古刹・長興寺の庫裏が今夏、取り壊される。民俗学者の柳田国男が昭和5年に「民間伝承論大意」を講演し、国内で初めて理論的に民俗学が語られた場所としても知られるが、耐震補強の必要性などから新築されることとなった。ただ、重厚な造りを支え続けた当時の部材や技術は今も健在で解体が惜しまれる。 
 明治41年1月、長興寺で起きた大火の後に建てられた庫裏で木造3階建て。当時は多くの修行僧を抱えていたため居住空間の再建が優先されたという。  正面の引き戸を開けるとたたきの先に30畳もの玄関が広がり、奥には幾部屋もの和室が連なる。昭和53年の本堂再建まで、本堂として使用された空間だ。役場の会議や住民の宴会など地域の寄り合いにも幾度となく使用されたという。無垢材の階段を上ると40畳の大広間が広がり、名勝の庭園を見下ろすことができる。この広間で89年前、柳田国男が洗馬小教員ら多くの住民を前に民俗学を語った。  松の大木の梁、ヒノキの柱、ケヤキの床板など建築当時の材や技術が今も建物全体を支え、つつましやかな中にも職人たちの意匠が感じられるが、関係者で協議を重ねた結果、解体が決まった。20日に解体を始め、今秋にも新たな庫裏に着工、来年11月の完成を予定する。  牧野英俊住職(67)は「素晴らしい造り、至る場所に刻まれた歴史や思い出、それら全てとの別れが今はただただ寂しい」と名残を惜しんでいる。