連載・特集

2019.8.24みすず野

 作家の山本周五郎は昭和18(1943)年、『日本婦道記』で推された直木賞を辞退した。戦後も毎日出版文化賞や文藝春秋読者賞を断る。賞で権威付けられるのを嫌ったのだろう。つましく暮らす武家や、けなげな庶民の哀歓を作品に描き続けた◆小欄に過日「読書量が増えた」と書いたら、同僚が「これも読め」とやたらに本を持ってくるようになった。薦められるまま『婦道記』に泣かされ、半藤一利さんの『清張さんと司馬さん』(文春文庫)を斜め読み。松本は大学出の「鼻っ柱をポキッと」折るのが楽しみで、学校嫌いだった遼太郎は誰もが習う唱歌を「それは何の歌か?」と聞いたそうだ◆いろいろな生き方があるよと、子供たちに伝えたくてここまでつづった。かく言う大人も生きづらさや悩みに直面している。豊科で講演された青山俊菫師の言葉「失敗にこだわる心が人を駄目にする」を記事で読み、ふっと元気付けられた。「人生の全てを『退屈しなくていいぞ』くらいに思うことが大切」◆老師はこうも語られた。「人生の目的は長生きすることではない。よく生きることだ」と。よく生きる―これが凡夫には難しい。