連載・特集

2019.8.21みすず野

 「三経」とは、「帰去来の辞」「桃花源記」で有名な中国の詩人陶淵明の詩から、庭にしつらえた松の道、菊の道、竹の道を言うが、必ずしもその三つではなく、門への道、裏口への道、井戸への道を指したり、隠者の庭や庵自体をそう呼んだりするらしい◆こだわらなくてもいいのだろう。大小にかかわらず庭がある人は、そこに三経をこしらえ、花木を植え、手入れをして、移ろう季節と共に暮らす。それが趣深い生き方だというのである。三経らしきものはないが、好きな樹木を植えた庭があり、草との闘いをひとまず終えると、夕涼みがてら歩きたくなる◆どうせ歩くならと、下駄を出してきて歩く。昨今、下駄歩きしている人はいない。そろいの浴衣に下駄を履き、宵祭りなどに出かけるカップルは見るが、昔ながらの分厚い歯の下駄を、カランコロン鳴らせて歩いている人は皆無と言える。高校時代、下駄で電車(ゲタ電と呼んだ)通学したのが思い出される◆高校生のファッションだった。話がそれてしまったが、三経を持ちたい。それは詩的な三経、心の三経でもあるからだ。豊かな心、暮らしを愉しむ心につながる。