連載・特集

2019.8.10みすず野

 活水辺りを恋人と歩いた。稲佐山から夜景を眺めた。小学校の修学旅行で原爆資料館に初めて入った。自らも重傷を負いながら被爆者の救護に当たった医師・永井隆博士のことを教わったのはそのときか。バスガイドが「長崎の鐘」を歌ったかまでは覚えていないけれど◆松本市立博物館のロビー展で博士の水彩画を見て、長崎の思い出に浸った。旧安曇村橋場の加藤大道が手掛けた版画と対で飾られ、原画との共演だ。アジサイの花や葉の色の違いを見比べ、添えられた詩句とともに聖母像やビワの実の絵を味わう。鑑賞の場が平和を考える機会にもなる◆永井が加藤に宛てた手紙もあった。右目が見えなかった版画家を近眼の〈棟方(志功)さん〉と思い合わせ、信濃の雪景色を版画で鮮やかに見せてもらい〈胸がスーとしました〉とつづる。テレビもスマホも無かった時代の心の交流がしのばれる◆今年の夏は梅雨明けが遅かったから10日ほど後ろへずれているような感覚だった。地元校不在の甲子園もいつの間に開幕したのかと思っていたら、きのうの長崎忌で"体内時計"の針が現実とぴったり合った。午前11時2分に黙とうした。