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南木曽・土石流災害から5年 重い教訓を胸に防災対策模索

町の中心部を流れる梨子沢。復旧工事は完了し災害の痕跡は感じさせない
 男子中学生1人が犠牲となり、40棟を超える建物が被災した平成26年7月の南木曽町梨子沢土石流災害は9日、発生から丸5年となる。総額50億円を投じた復旧工事は29年6月末までに完了し、災害の痕跡は感じさせない。しかし雨が多く山に囲まれた南木曽は、災害の危険と常に隣り合わせだ。つらい経験を教訓に防災力を高める模索が続く。 
 「テレビで豪雨の映像を見るたび、あの時何とかならなかったのかと思う」。梨子沢右岸から100メートルほどの場所に暮らす松原朗さん(72)はうなだれる。発災直後、道具もないまま手で泥をかきわけ救助に当たった。しかし少年を救えなかった。  土石流発生前、南木曽ではレーダーの解析雨量で1時間約90ミリの猛烈な雨が降ったが、ごく短時間で局所的だったとみられる。  地元では土石流を「蛇抜け」と言う。松原さんは「抜けて初めて(災害発生が)分かった」と振り返り、危険を察知して素早く避難する難しさを語る。  災害後、町内では各地区で自主防災力を高める取り組みが続くが、歩みはまだ途上だ。松原さんが当時務めた三留野地域振興協議会長を現在担う白金温さん(70)は「1人暮らしの高齢者も多い。例えば夜間に避難が必要になった時どうするのか。非常に難しい」と課題を話す。  町は防災無線のデジタル化、雨量計の増設など防災対策を進めてきた。危険箇所を示すハザードマップを模造紙大にした拡大版を区単位に作り、住民が危険箇所や避難経路を確認する会合の開催も促してきた。櫻井親一総務課長は「住民の関心は高い。地域主体で避難する体制、意識づくりを地域と共に構築したい」と力を込める。  高校講師で気象予報士の花井嘉夫さん(66)=読書=は5年前、犠牲となった少年の家のすぐ下流にあった生家を流された。「南木曽は花こう岩の風化地帯で地形的にも集中豪雨が起きやすい。異常な雨が降ったとき、行政の情報を待っていては間に合わないことがある。自分で自分の身を守る意識が必要」。過去に町内で何度も土石流を目にしてきた経験と、気象予報士の知識に基づき指摘する。南木曽で「蛇抜け」の言葉が廃れることはない。