連載・特集

2019.7.6みすず野

 もう5年たつのか。発災翌日の7月10日朝に木曽川の対岸から見た光景を忘れない。流れ下った土石は住宅を壊し、護岸をえぐり、重さ8トンもの橋桁を二つ飛ばして枕木やレールが宙ぶらりんになった。何よりも重い中学生の命を奪った◆土石流を木曽の人たちは「蛇抜け」とか単に「抜ける」と言い、南木曽町にある「蛇抜けの碑」は「白い雨が降るとぬける―」と俚諺を刻む。本当に白いのだ。広重の絵のような雨が強さの程度を超えると、辺りが明るく真っ白になる。あの恐怖は経験した人でなければ分からない◆九州南部を襲った記録的な大雨の被害に胸が痛む。人命が失われた。当地でもたびたび小さな沢が抜けたり護岸が壊れたり、崩れた土砂が生活道路をふさぐ。災害の心配が薄い地域などない。わが事として日頃の備えにつなげたい◆〈七月六日はサラダ記念日〉だ。俵万智さんはあえて、七夕の1日前を選んだという。〈「この味がいいね」と君が言ったから〉―何の日でもない日が記念日になった。サラダと7月のS音で踏んだ頭韻が恋のうれしさを爽やかに伝える。一人一人がそれぞれの記念日を重ねられますように。

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