連載・特集

2019.7.27みすず野

 落語の「素人鰻」は〈士族の商法〉を滑稽に描く。昨日まで二本差しで威張り散らしていた特権階級のしくじりを維新期の庶民は笑い、留飲を下げただろう。後世の人たちは、ぬるぬるウナギに手を焼く高座の名人芸に拍手した◆かば焼きのおいしそうな写真が紙面に載り、店の前を通ると換気扇越しに香ばしい煙が漂ってきた。目と鼻から入る刺激に攻めたてられて腹が鳴る。稚魚の漁獲量の減少でウナギの価格は今年も高止まりという。「そうは言っても夏バテ防止」と財布のひもが緩む。きょうは土用の丑◆読者投稿欄の本日付に「竹乃家で1杯55銭の中華飯を食べるのは最高のぜいたく」とある。1円の小遣いをもらい、あとは映画を35銭で見て、まんじゅうを10個買って帰った。「ラーメンが15銭」だった昭和15年ころの思い出だ。少し高い物を食べると、栄養が身に回るようで元気が出る◆やっぱり鰻は高いと諦め、同じ土用でも代わりにシジミを求めることにした。日頃から休息と水分補給を心掛けて暑さを乗り切りたい。何か一つでも身に付く夏にしよう。家人にどこへ行くのと問われ「鰻に聞いてくれ」とならないように。