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北杜夫さん形見の昆虫標本2000点 整理作業完了し信大が展示企画

整理作業が終了した北さんの昆虫標本

 信州大学の前身校の一つ、旧制松本高等学校の卒業生で作家の北杜夫さん(1927~2011)が採集した膨大な昆虫標本の整理作業が終了した。信大創立70周年と旧制松高100周年の節目に合わせて今月下旬から展示されることになり、信大が準備を進めている。終戦直前に松本周辺で採集した昆虫が数多く含まれ、同時期の国内標本は他に知られていないことから当時の自然環境を知る貴重な財産とされている。

 北さんの2000点を超える昆虫標本は、綿に包まれ簡単なラベルが付けられた状態で残されていた。日本昆虫協会や北さんと親交のあった研究者らが標本とデータをそろえる同定作業を平成22年まで行い、その後、姿を整えた標本を作成してきた。今回は松本市県3の旧制高等学校記念館で6月27日~7月23日に展示される予定で、松本での北さんの昆虫展は過去も開催されたが、整理された状態での大規模な展示は初めてとなる。
 北さんは戦時中の昭和20年に松高に合格し、入学は8月にずれ込んだ。6月に寮生活を始め、美ケ原高原や憧れだった上高地で昆虫採集し、上高地では5日間の山行で500以上の個体を集めた。入学と同時に学徒動員された大町の軍事工場で休憩時間などに採集した標本も残る。
 中には学術的な価値が高いものもあり、昭和21年4月に同市浅間温泉で採取されたクロモンエグリトビケラは、当時国内の記録がなく、日本で最初に採集された標本とされる。現役の学生の研究材料にも活用されているという。
 展示では、北さんの昆虫にまつわるエピソードや関連する著書なども紹介する。このほど開かれた信大70周年記念式典の会場でも一部を展示し、来場者の関心を集めた。
 信大自然科学館館長で理学部教授の東城幸治さん(47)は「北さんが好きで残してくれた標本で昔を知ることができ、科学的にも利用されている。これからの信州の自然についても考える機会になれば」と話している。問い合わせは信大自然科学館(電話0263・37・2435)へ。