連載・特集

2019.6.4みすず野

 「木は神聖なものだ。木に傾聴することのできる人は、真理を体得する」と述べたのは、かのヘルマン・ヘッセ(『庭仕事の愉しみ』草思社)。木の声を聴くことができる人、という意味だろう。樹木医がそうにちがいない。庭師もきっと◆木の中でも巨木、巨樹はさらに神聖なものであるし、巨木と長い時間対してみたいが、いまだその機会がない。国内で有名な巨木というと、鹿児島県屋久島の数千年生き続けているとされる「縄文杉」、同じく鹿児島県蒲生町のクスノキ。このクスノキは環境庁(当時)の調査で、日本一大きいと認定されている◆ほかにも各地に巨木は存在し、香川県志々島の大クスも、せんだってテレビ映像で見て驚いた。樹齢1200年、幹はあまり上に向かわず、太い枝が地を這うように50メートルも伸びていた。人口わずか18人の島に、この木を眺めようという人たちが船でどっと渡って来ていた◆作家の高田宏さん(故人)の『祈りの木』(飛鳥新社)は、全国の巨樹40選の一冊。上松町のヒノキも登場し、「人びとの苦しみ抜きに語ることはできない」と高田さん。木曽人の歴史を重ねて見る"美林"である。

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