連載・特集

2019.6.26みすず野

 老後不安にもいろいろあるが、大きなものは健康、そしておカネだ。働きたいと思っても年齢の壁があるし、体が言うことを利かなくなる。年金、貯蓄などに頼るほかない。仮に95歳まで生きるとしたら、公的年金以外に夫婦で2000万円の蓄えが必要である◆金融庁のこの試算報告が、国民不安をあおったと、事実上撤回された。参院選を控え、選挙に不利になるとして安倍政権が火消しした。2000万円は、無職の高齢者夫婦世帯の月額収支差5・5万円を、30年間かけただけの単純な数字で、おおざっぱな平均値に過ぎない。だいたい公的年金は、個人差が大きい◆主に自営業者や農業者が加入する国民年金の場合、支給額は平均月額5・5万円(40年間保険料を支払った場合、満額は6・5万円)。厚生年金の14・7万円と一緒にして平均を出すのは乱暴だ。現在は非正規労働者など、国民年金のみ加入の人たちが増えている。と考えると、2000万円では足りないだろうし、蓄えてと呼びかけても無理なものは無理◆撤回などという姑息な手段ではなく、年金制度の抜本改革への出発点にしないと、深刻な事態を招くだけだ。