連載・特集

2019.6.23みすず野

 岡山県備前市の旧閑谷学校は、江戸前期の岡山藩主・池田光政が設けた。庶民にも門戸を開いた学問所で、30年余りかけて建てられた。講堂が国宝だ。旧開智学校の国宝昇格で「学校建築で唯一の国宝」ではなくなる◆訪ねたことがあり、きれいに刈られた薄緑の芝が印象に残る。ウェブサイトを見ると、備前焼の赤瓦をふいた入り母屋造りが威風辺りを払い、四方に巡らせた縁側や壁の花頭窓が質実の藩風を今に伝える。市民が正座して論語を朗誦したり、床を磨いたりといった年中行事が国宝講堂で続けられている◆国替えや改易になっても学校を存続させるよう、光政は遺言したという。学問が人を育て、育てられた人が国や地方をつくるという信念が支えだったのだろう。社寺や城郭の価値がその古さと美しさなら、学校には連綿と受け継がれてきた教育への思いも加わる◆旧開智学校の国宝指定に向けて、小紙が街なかへの回遊や丸の内緑地―など課題を取り上げていた。地域の宝に磨きをかける。市民の関心と誇りを高め、協力を引き出す取り組みも求められよう。旧閑谷学校は来年創学350年を迎える。先輩に学びたい。