連載・特集

2019.5.28みすず野

 ロードショーの期間中、一度では足りず二度、三度映画館に足を運んだ作品があって、その一つが降旗康男監督、高倉健主演の「鉄道員(ぽっぽや)」だった。泣けて泣けてどうしようもなく、終幕後、明るくなった館内で慌てて頬をぬぐった◆「ホタル」も、この盟友二人による名作。本紙創刊30周年事業として、封切り前にエンギザ(当時)で、特別試写会を開かせてもらった。6年前開催された上土映画祭では、「あなたへ」の上映後、「上土に元気になってほしい。また多くの人が集まる映画の街になってほしい」と語った◆そんな監督の作品群の中から、一つ挙げろと言われれば「駅 STATION]だ。健さん演じる孤独な警察官は、凶悪犯を追う狙撃手。業務に疲れ、年末年始休み、帰郷の途次に駅前の居酒屋に立ち寄り、桐子と出会う。二人は新たな人生を踏み出そうとするが、運命が非情にも切り裂く◆北海の海鳴り、繰り返し流れる「舟唄」、雪の寂しい駅舎...。降旗監督がカメラの後ろに立つ姿が見える。やさしさの奥に「活動屋」としての誇りを秘め、時代遅れの曲がれない男たちを撮り続け、逝ってしまわれた。