連載・特集

2019.5.23みすず野

 「何でも捨ててすっきりすればいい、というものではないでしょう。大方『断捨離』の意味を誤解していると思う」と、知人が断捨離ばやりに顔をしかめていた。断捨離は、やましたひでこさんという人が著書で、10年ほど前に提唱した◆ヨガの行法を応用し、不要な物を減らして、身軽で快適な生活と人生を手に入れよう、との考え方。ただ片づける、捨てるという意味ではないようだ。年齢を重ねると、確かにいろいろな物が家の中にたまる。子どもは巣立っているのに、ゲームだの運動具だの衣類だのが、残されていることも◆思い出の染み込んだ物まで、全部捨ててしまう必要はない。整理し、その子ども部屋を自分の部屋に変えたとすれば、気分は一新する。つまり、断捨離が新たな人生のスタートになる。知人が断捨離に否定的なのは、捨て去ったあとの殺風景さ、その人が歩んだ痕跡、築いた世界までなくした部屋の寂しさを身近に見たからだった◆要は程度の問題であろう。簡素に徹した茶室は美しい。季節の一輪の花が息づいて、なお美しいが、それは究極の世界であって、日常空間は整理整頓されていればいいのでは。