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2019.5.18みすず野

 八角塔屋を挟んで向かって右に窓が5列、左に6列。このほうが右端の入り口近くから斜めに仰いだ外観の見栄えがいい―と言う人もいるそうだ。重文開智が国宝に指定される◆設計施工を担った東町の大工棟梁・立石清重がもしも西洋建築の専門家なら左右対称の校舎になっていたかもしれない。独学だった。維新から間もない東京や山梨に徒歩で出向き洋風の建物をスケッチした。文政12(1829)年生まれだから脂の乗った40代半ば。道中の出費帳に「牛肉」の字も見える◆車寄せ2階バルコニーの上で天使が異彩を放つ。他に例を見ない意匠といい、当時の「東京日々新聞」の題字とそっくり。校舎内の展示に教わった。棟梁の目に天使は新しい時代のシンボルと映ったか。竜の彫刻や唐破風との対照が和洋折衷の特徴を際立たせる◆天使は明治30年ころ姿を消し、昭和38年からの移築修理で復元された。重文開智の学芸員・遠藤正教さん(35)は「西洋建築に触れたことに加え、江戸期に松本城の修理普請にも携わった確かな技術から独創的な建物が生まれた」と話す。清重でなければ造れなかった。松本の誇りが国の宝になる。

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