連載・特集

2019.5.17みすず野

 塩入久さん(松本市)の本紙連載「木版画 北アルプス山麓の四季」は、平成29年4月「桜の咲く頃(光城山)」から始まり、3月の「春告(池田・会染)」で幕を閉じた。2年間48回。毎回少し季節を先取りし、紙面を新鮮で彩り豊かなものにしていただいた◆木版画は、小学校の授業で一度は教わるが、生涯かけて取り組む人は皆無に近い。塩入さんにはよほどの根気と情熱があり、失われゆくふるさとの情景に対する渇望、それを後世に伝えようとする執念すら感じる。しかし、作品自体は壮大で、立体感に富み、さわやかである◆現在の長野市信州新町に生まれ、会社勤めの傍ら、その腕を磨き、数々の賞を受賞してきた。作品を見たわれわれが「ああ、いいなあ」と心を動かされるのは、卓越した技量はむろんだが、それ以上に塩入さんが培ってきた心情が宿っていて、限りない郷愁を誘われるからだろう◆連載作品を網羅し、松本城、諏訪御柱、信州新町の四季を加えた画集『北アルプス山麓の四季』(3800円税別)が刊行された。木版画家・塩入久の集大成、と言って過言ではないのでは。手に取っていただければ幸い。