連載・特集

2019.4.21みすず野

 テレビの前で同僚が「松本で言えば、お城が焼けたようなもの」と言った。ノートルダム大聖堂の尖塔が炎に包まれ崩れる映像だ。虚空を仰ぎ「方角が分からなくなった」と嘆くパリ市民の喪失感は察するに余りある◆火災の翌々日付の紙面で松本城の防火対策の課題が伝えられていた。消火器や消火栓はあっても、人が操作しなくてもいいスプリンクラーなど新たな設備の検討も必要という。予算が足りなければ寄付を呼び掛けてはどうだろう。武骨で優美な五重天守は多くの市民の心のよりどころだ◆平城遷都(710年)の年の創建と伝える奈良の興福寺は幾度も火災に遭った。平氏の南都焼き討ちでは東大寺とともに多くの堂宇が灰じんに帰した。そのたび仏像を運び出したり、再建に尽くしたりした人たちがいたおかげで、今日も天平の至宝を目にすることができる◆平成5年に開かれた国宝松本城400年まつりで、天守が「私は夢を見ていた」と城の歴史を語る趣向があった。築造年代が豊臣政権下の文禄期だと41回目の改元となる。騒々しいちまたを見下ろし「元号が変わる?それがどうした」と言っているように聞こえた。

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