連載・特集

2019.4.10みすず野

 春の味の一つにシジミ、アサリがある。シジミは河川や湖にいる小さな二枚貝。琵琶湖水系の「瀬田蜆」や山陰・宍道湖産の「大和蜆」が知られているとか。そう言えば、せんだって津軽に旅をした折、金木(太宰治の出身地)の小さな駅で、名物という「しじみラーメン」を食べた◆近くの十三湖産のシジミがいっぱい入っており、食べ終えるのに苦労したが、おいしかった。江戸っ子の時代小説家・池波正太郎は「『アサリ、シジミ...』の売り声がきこえると、祖母や母が笊を手にして台所から出て行ったものだ」と、思い出話をつづっている。ただし、別にうまいとは思わなかったと◆シジミは、その昔から肝臓に良いとされ、薬用にも用いられてきた。そう言えば、テレビコマーシャルで「しじみ習慣」とか「オルニチン効果」とか盛んに流れている。帯に「おいしい俳句をめしあがれ」とある『旬の菜時記』(朝日新書)を開いたら、「蜆汁と蜆の深川めし風」の写真とレシピが紹介されていた◆いずれにせよ、手に入りやすいシジミやアサリを食し、春を実感したいもの。野の味となると、やはりナズナ、セリ等であろう。

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