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老舗「王滝食堂」閉店へ 「いのぶた丼」惜しむ声

 王滝村で60年以上にわたり、地元の常連客に加え、御嶽信仰の登山客や観光客、スキー客らに親しまれた「王滝食堂」が29日、閉店する。2代目店主・吉澤慶太さん(59)が、体力や年齢を踏まえて一つの区切りをつけることにした。名物の「いのぶた料理」を愛する常連客に惜しまれている。

 吉澤さんの父・光夫さんが60年余り前、村内中心部に店を構えた。村が「イノブタ牧場」を村内で直営したのをきっかけに、地元食材を使った「いのぶた丼」「いのぶた鍋」といった料理が誕生した。「豚より柔らかくて甘みが強い。脂身もうまい」と評判を呼び、看板メニューになった。
 吉澤さんは平成元年に故郷に戻り、光夫さんらと共に店を切り盛りした。80歳を過ぎるまで調理場に立った光夫さんが今年1月、87歳で亡くなった。2人の娘はすでに嫁いだ。「丼物のだしの配合はおやじ直伝だが、教える跡取りがいないのも閉店の要因」だ。
 昼時の店内は常連客らであふれかえり、夜も住民の宴会場として欠かせない交流の場だった。吉澤さんは、閉店の決断について「これで良かったのかと今でも思う」と語りながら「第二の人生を歩もうと決めた。おやじの時代からひいきにしてくれたお客さんには、感謝の思いしかない」と話している。
 29日までの営業時間は、午前11時から午後2時半まで、5時から「お客さんが帰るまで」。