連載・特集

2019.3.15みすず野

 GHQ(連合国軍総司令部)占領下で、吉田茂の側近として活躍し、数々の逸話を残した実業家の白洲次郎は、「葬式無用、戒名無用」と遺言し、正子夫人ら遺族はそのとおり酒盛りしただけで終えたという◆戦前からモダンな生き方を貫いた白洲らしいが、昭和60(1985)年当時としては、かなり勇気ある主張だったのでは。平成の30年を経て、葬儀や墓の形態は随分変わった。一口に言えば、簡略化した。家制度が核家族化、単身化などで崩壊するなか、葬式にカネをかけられない、かける必要性を感じない人が増えた◆「世間体など関係ない」「家族葬で十分」「戒名も要らない」...。墓は守ってくれる子孫がいて存続するが、いないか、いても遠方に住んで守れないとなれば、墓じまいし、永代供養墓、合葬墓、樹木葬などにするということで、個人の意志を尊重できる時代にもなった◆ただ、檀家制度は存在し、それが寺の経済を支えている。戒名も授からなくていいとなれば、檀家を抜けるしかないのではないか。一人一人に「死に方の思想」が求められている、と言うと大げさかもしれないが、考えておかねばなるまい。