連載・特集

2019.2.24みすず野

 名古屋から新幹線で博多へ向かうと、生八ツ橋、きび団子、もみじまんじゅう―車内販売の声で今どの辺りを走行中か分かったものだ。ちょっと値の張るあなご弁当や牛飯を楽しみにし、たまの旅行だからと財布のひもが緩んだ。今はどうだろうか◆JR東日本が来月16日から在来線特急と新幹線の多くで車内販売での弁当や土産品の取り扱いをやめ、「あずさ」も飲料や菓子、つまみなどのみとする。乗車前に駅構内の売店やコンビニで購入する客が多い。とは言え、20年ほど前に新幹線から食堂車が消えて以来の寂しさだ◆鉄道ミステリーのテレビドラマでは駅弁や特産品が時として事件の鍵を握る。途中駅だと停車時間が短くてホームの売店で買えない。土地の銘菓を掲げながら近づくあの売り声もいずれ鉄道博物館でしか聞けなくなるか。かつて食堂車の人気メニューだったカレーライスのように◆8年後の開業を目指すリニア中央新幹線は東京―名古屋を40分で結ぶ。弁当を広げるいとまもなく、移動はますますせわしさを増す。停車駅で列車の窓を開け、立ち売りの人を手招きした世代にとっては旅情という言葉も遠のくだろう。