連載・特集

2019.2.15みすず野

 時間の流れを止めることは誰にもできない。歳月は容赦なく過ぎ、人は老い、亡くなってゆく。平成の30年間もそうで、あの太平洋戦争を遠い出来事に追いやり、風化させた。戦争を体験した人たちはすっかり減った◆元教員・古畑博子さん(松本市波田)が著した『ピアニストの兵隊さん~ちりめん先生の記~』(ほおずき書籍)を手にし、文中に出てくる満蒙開拓青少年義勇軍、勤労奉仕、学童疎開、松本50連隊、地下壕、進駐軍、黒塗り教科書...これらの一つ一つが、理解するまでに相応の説明を要する、と改めて知らされた◆古畑さんは、95歳の母絢子さんの戦争・戦後体験を、絢子さんの介護をする日々の中から掘り起こし、7年前に出版した絵本をベースに物語にまとめた。「戦争はこりごりだよ」「戦争はどんなことがあっても、絶対しちゃいけない」。絢子さんが口にする言葉が古畑さんの心に染み、執筆に駆り立てたという◆「戦争が遠のき、体験の痛みが薄れ、平和を壊そうとする動きが感じられるのは、私だけでしょうか」。だからこそ、本にした意味は大きい。若い人も手に取ってもらえれば、との願いが伝わる。

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