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田淵行男が愛した自然守ろう 没後30年企画、穂高で意見交換

 山岳写真家や昆虫生態の研究者として知られ、今年で没後30年を迎える田淵行男(1905~89)をテーマにした座談会が19日、安曇野市穂高交流学習センター・みらいで開かれた。田淵は、開発などで安曇野の自然と景観が変貌し、昆虫が激減する状況を憂慮して、写真集の出版などを通じて思いを伝え続けた。座談会は、田淵の写真や生き方を通して環境保全について考えるのが目的で、昆虫や民俗学の研究者ら4人が登壇し、意見交換した。

 県立歴史館(千曲市)が主催した。笹本正治館長が司会を務め、田淵が撮った写真をスクリーンに映し出しながら登壇者の意見を聞いた。両岸に草が生え、緩やかに曲がる水路・堰を撮った写真は何気ない風景のようだが、現在はコンクリートで固められた直線の水路が主で、ほとんど見られなくなった。安曇野に生息する絶滅危惧種のチョウ・オオルリシジミを研究する帝京科学大学(東京都)講師の江田慧子さんは、オオルリシジミの食草はクララで、トイレの「ウジ殺し」などに利用するため堰沿いに刈り残されていたと紹介した。チョウだけでなく、こうした安曇野ならではの風景も守っていきたいとした。
 田淵と親交のあった安曇野市文化課の那須野雅好課長は、田淵行男記念館(安曇野市豊科南穂高)の建設が持ち上がった際、建物に飼育室を設けて、生きた昆虫を子供たちに見せてほしいと田淵から打診があったと振り返った。実現しなかったが、子供を野山に連れ出して直接触れる機会を作れば遺志を継げると考え、「昆虫クラブ」を結成したと説明した。飯田高校の校長で民俗学を研究する巻山圭一さんは、山肌に現れる「雪形」の研究を通じ、田淵が民俗学者と交流があったと紹介した。
 座談会は、歴史館で2月17日まで開かれている冬季展「自然を見つめた田淵行男展」の関連企画で、市民ら約200人が聴き入った。

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