連載・特集

2019.1.28 みすず野

 「耳順」と書いて「じじゅん」と読む。60歳の異称だ。かの『論語』の「吾十有五にして学に志し、三十にして立つ。四十にして惑はず、五十にして天命を知る。六十にして耳順ひ、七十にして心の欲する所に―」の「耳順」である◆激動の現代、長寿のいまにはとても当てはまらない、という人がいるが、そうだろうか。何歳になっても惑う。しかし、40歳で根幹が惑い揺らいではいけないし、50で天命、天職を知るのは、残りの人生を考えたとき当たり前と言えば当たり前。還暦60で人の言うことに逆らわず、素直に聞ける境地に至るのは正直難しいが、開き直ればいい◆かく思わなければ、さりげなく聞き流し、これはと感じられれば、参考にする。勤め人の場合、仕事人生の"本編"は終わり、一個の人間に戻る。仕事以外の人としての生き方のほうが問われる。ならば、本当の自分と向き合って、わがままに生きていけばいいのではないか◆わがままとは、やりたい放題のことではなく、自分のあるがまま、自然体という意味である。『論語』を読んでいる先輩がいる。いやいや「足るを知る」の『老子』でしょう、の方もいる。