連載・特集

2019.1.26みすず野

 きょうは文化財防火デー。ちょうど70年前の昭和24年1月26日、奈良・法隆寺金堂で飛鳥期の壁画を焼損する火災が起きた。文化財保護法が翌年に制定された◆金堂の梁や垂木を支える雲斗・雲肘木という部材があり、火災の3年後、復元を担う彫刻家の中に木曽福島の千村士乃武がいた。推薦したのは信州ゆかりの彫刻家で東京芸術大学教授の石井鶴三だ。石井が周辺の実力者を選んだなかで異色の起用という。日展作家の千村は上松中学校の美術教師だった◆千村作品も収める上松町の木曽路美術館(休館中)で学芸員を務めた伊藤幸穂さん(44)に教わった。千村は復元に当たって、木曽で飛鳥時代の大工道具を作ってもらうなど熱心に取り組んだ。千村が製作した部材の石こう原型は今も芸大に伝わっている。石井は島崎藤村や教育会を通して木曽と縁があった◆石井に認められ、後世に残る仕事や古代の職人との"対話"ができる―その感性と心躍りは想像するほかない。伊藤さんは「法隆寺再建に郷土の芸術家が携わったのは誇り」と言い、関心が文化財や千村に向けばと願う。法隆寺へ行く機会があったら軒下を仰いでみよう。