連載・特集

2019.1.20みすず野

江戸後期の文人の鈴木牧之は越後の雪国生活記『北越雪譜』で述べている。「鳥獣は雪中食無きを知りて雪浅き国へ去るもあれど、一定ならず、雪中に籠り居て朝夕なすは人と熊犬猫也」と。後半生をふるさと越後で生きた、かの良寛も同時代の人である◆ほぼ200年前、雪国の冬を過ごすのは厳しく、つらいものがあった。ましてや山中の小さな庵に独り暮らした良寛には、耐えがたい日々だったにちがいない。冬が来る前に里の人たちからいただいた食料や衣類、自ら集めたであろう薪を大事に大事にして、何とか命をつないだ◆「千峰 凍雪合し 万径人絶ゆ 毎日ただ面壁のみ―」と詠み、「山かげの草の庵はいとさむし柴をたきつつ夜を明かしてむ」とうたった。寒くて眠れるはずがない。壁に向かって座り、書物を読んで日が昇るのをじっと待った。修行以外の何ものでもない。だからこそ、良寛の詩歌は胸に響く◆信州ゆかりの作家・中野孝次さん(故人)も良寛を慕った一人。「良寛は精神の力によって身を支え、生きていた」とし、ゆえ春の訪れの喜びは大きく、人生そのものの彫りが深まった、と言っている。

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