連載・特集

2019.1.16みすず野

 哲学者と言うと、観念的で難解な理論を展開する人をイメージするが、決してそうではなく、仏教や文明、現代社会に関して、独創的でありながら、読んでわかりやすい文章を書かれた。梅原猛さんである◆大作、コラム集など30冊以上手元にあり、折々の新聞登場記事も保存してきたので、何をどう書いていいか悩む。梅原さんは昭和20(1945)年、京大に入るものの、入学式から帰ると赤紙が来ていて、死を覚悟した。敗戦によって生き延びたものの心の傷は深く、ニヒリズムからなかなか抜け出せなかった◆一貫した反戦思想は、自らの戦争体験に基づく。「梅原日本学」の分野を打ち立てたが、その根本は非業の死を遂げた者は、怨霊となり、権力者に恐怖を与えたため、神に祭られた。学問、芸術は怨霊によって永遠になる、とのとらえ方だ。オウム事件のときも、教祖の社会に対する深い憎悪と支配欲について語り、科学文明批判を繰り広げた◆「長い伝統をもつ仏教には、人間への深い洞察があり、人間を救う深遠な教義をもっている」「森の文明の考え方の基本は"生命はひとつだ"ということ」。93歳で泉下の客に。

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