連載・特集

2019.1.14みすず野

 「昭和四十年前後から、この二十二歳の私自身に手紙をかきはじめました。私の作品はそのことに尽きます」。国民的作家だった司馬遼太郎は晩年、こう述べている(『司馬遼太郎が考えたこと15』新潮社)◆太平洋戦争で戦車隊に組み込まれて満州(現在の中国東北部)に渡り、敗戦時、栃木に駐屯していた司馬青年は、「なぜこんなばかな戦争をする国に生まれたのか」「むかしの日本人は、すこしはましだったのではないか」と痛感し、その疑問を解くために、二十二歳の自分に手紙を書き送るように、延々歴史小説を書き続けてきた、というのである◆こんな文章もつづっている。「日本の古典でいう"よき人"という存在が、心を豊かにします。私心が少なく、公共への愛があって、たえず泉のように智恵の湧き出している人のことです」。きょうは「成人の日」。明るい未来が描きにくい時代とはいえ、若い人たちには先がある◆いまの自分の率直な思いに、いつの日か答えを出すつもりで生きていってはどうだろう。政治や社会に違和感を抱いている人はなおさらだ。ただ答えを見いだすには、不断の努力が要るようである。