連載・特集

2019.1.13みすず野

 村上春樹は神宮球場の芝生の外野席でヤクルト―広島戦を観戦していた時、小説を書いてみようと思い立つ。人生いつ何があるか分からない。もしも先頭打者のヒルトンが2塁打を放たなかったら、『1Q84』の青豆の名言も生まれていないかもしれない。〈希望のあるところには必ず試練があるものだから〉◆絵本『病院の子どもたち』を描いた木版画作家・小平彩見さんを安曇野市のアトリエに訪ねた時も〈希望〉という言葉を何度も聞いた。重いテーマだからけっして明るい話題ばかりでなかったけれど〈作品を見た人が希望のきっかけを感じてもらえたらいい〉◆きょう松本、安曇野、塩尻の3市で成人式がある。三十数年前の式の日はあがたの森に近い下宿の屋根に布団を敷いて寝転がり、本を読んでいた。お手本と呼べる先輩ではないが、新成人の皆さんへ贈る言葉を本棚に探した◆山本周五郎は富み栄える者よりも貧困や無知で苦しんでいる者の中に未来の希望を見ようとした作家である。〈見た眼に効果のあらわれることより、徒労とみられることを重ねてゆくところに、人間の希望が実るのではないか〉『赤ひげ診療譚』

連載・特集

もっと見る