連載・特集

2018.12.7みすず野

 初冬に晴れたり、降ったり、断続的に降る雨を「時雨」と言う。山沿いの地方に多い。京都の「北山時雨」などは、時雨の代名詞になっているし、夜降ると「小夜時雨」と表現する。冷たい雨ではあるが、どこか情緒を伴う◆15年ほど前だったか、吉永小百合さん主演の「時雨の記」という映画があったのを思い出す。しぐれたり、みぞれに降られると、気持ちは塞ぎがちになる。とりわけ病気の人、人間関係がうまく築けないで、孤独を感じている人、職をなくして明日の暮らしの見通しが立たない人など、日和を失う時雨はこたえるのではないか◆松本市が2年前から、各相談の受け付けを一本化して開設した「市民生活総合相談窓口」は、生活が困窮してしまった、との悩みが増えているという。その解決策にはならないが、シクラメン等の冬の花や、美しいものへの感受性を失わなければ、いつか柔らかな日の光が差し込むこともあるだろう◆時雨の一方で、小春日和もこの時季の天候を指す。山は雪化粧し、平野部の冷え込みも増すなか、まるで春を思わせる暖かい日がある。「一人行き二人畦ゆく小春かな」(水原秋桜子)か。