連載・特集

2018.12.18みすず野

 地元の曹洞宗のお寺の住職の法話を聞く機会があった。曹洞宗の開祖・道元の生涯、道元の大著『正法眼蔵』に触れながら、真に生きるとは何か、という内容だったが、何十年ぶりに道元、『正法眼蔵』の言葉を生で聞いた気がして懐かしかった◆どう生きたらいいのか、悩みに悩んでいた30歳前後、仏教精神にすがった数年間があり、『仏教の思想』(全12巻、角川文庫)などをあさり、道元ゆかりの地を訪ねて、道元が修業した中国の天童寺まで行ってしまった。浙江省の禅の名刹だが、そこには禅の張り詰めた雰囲気は、実はなかった◆800年前、道元が渡った当時の天童寺は、そうではなかったにちがいない。いま道元を論じる何ものもないので、二人の碩学の言葉を紹介したい。文学者の栗田勇さんは、日常生活の中で自分を失いかけたときや孤独な闇の深い夜、『正法眼蔵』をひもとき「道元の許へ帰ってきた」と安らぎ、勇気づけられるという◆哲学者の梅原猛さんは、『正法眼蔵』は日本一、ひょっとしたら世界一難解で、魅力的な書であるとし、逆説や矛盾に「とてつもない精神の深みが隠れている」と述べている。

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