連載・特集

2018.12.17 みすず野

 昭和の時代ですら「遠くなりにけり」なのだから、明治ははるか昔のことに感じるが、明治改元からことしが150年、と言われると、たった150年かとも思う。そんな明治時代を、現在の安曇野市出身の文芸評論家・臼井吉見はこう述べた◆「明治天皇制の性格は、軍国主義への傾斜を本質的にふくんでいたのであるが、日露戦争の勝利をきっかけにして、国を挙げて、この道をおし進んだ」(「明治とは何か」)と。日露戦争で大国ロシアに勝った日本は、「一等国」の仲間入りを果たしたとして、領土拡大にとらわれ、満州(現在の中国東北部)や韓国(朝鮮半島)に踏み込んだ◆まさに国家主義である。言論や表現の自由が保障されず、国家権力に歯向かう者を弾圧した時代、必死に抵抗した人たちがおり、非戦を唱えた新聞や雑誌等があったことも忘れたくない。それは大正へと引き継がれた。人々の精神文化は、地下水脈のように流れた◆平成はあと半年ほどで改元されるが、人は連綿と生き続け、精神文化を伝えてゆく。明治のその強大な国家主義と、一部の気骨ある反発を知ることもまた、未来につながるものではないか。

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