連載・特集

2018.12.16みすず野

 「誰にも言うな」と言われるとかえって教えたくなる。しらを切るのはつらい。京都・清水寺の森清範貫主は「今年の漢字」を揮毫の当日まで知らないそうだ。昨年秋に木曽福島の古刹で行われた講演で伺った◆清水の舞台での発表が始まったのは阪神・淡路大震災が起きた平成7年で、その年の「震」は事前に教えてもらった。「誰にも―」と念を押して1人に漏らすと町じゅうの知るところとなり、翌年から当日に知るようにした。予想が一遍だけ当たったと言い、関西地方が大いに沸いた15年の「虎」と笑わせた◆今年の「災」は老師も予想できたかもしれない。相次いだ地震に豪雨、台風、酷暑と災害の無い月のほうが珍しいくらいだった。平成の漢字は「震」で始まり「災」で締めくくられた。1字加えて「減災」の心構えを新たにし、誰もが「息災」にと願う年の暮れ◆講演で老師は「書は勢い」とも話した。筆の運びで本来なら「とめ」る所を「はね」ることもあると。おとなしい字面もはねると勢いよく見える。幾ら「はね」の見栄えが良くても10年の「毒」や13年の「戦」は二度と御免だ。やはり「虎」がいい。来年こそ。