連載・特集

2018.12.15みすず野

 心が温まる文章を昨日の紙面に見つけた。2人の中学生が「小さな親切運動」作文コンクールに寄せた作品である。明善中2年生の林佳奈さんは職場体験をした幼稚園で、年少の子の面倒をみた年長の子から「あたりまえのことしただけなんだよ」と返され、驚く◆親切を裏切られたからもう親切はやらぬ...そんな親切なら初めからするな―と書いたのは坂口安吾だった。戦後復興期に道義の退廃を嘆く風潮へ向けられた独特の安吾節で、使われている文脈も時代背景も違うけれど、作文を読んで思い出した◆不寛容が言われる。他人の言動が気に触る。自分だけが正しい。たちどころにSNSは炎上だ。親切にするのは当たり前で、親切にされるのは当たり前ではない―と書く林さんの心を多くの人がちょっとでも持てばきっといじめも減るだろう◆女鳥羽中1年生の田中心路さんは「親切をすることで人を笑顔にできる」と作文を結んでいた。学校に行きたくない気持ちを抱え、自分でもどうすればいいか分からないなかで、特別扱いをしない友達の一言に救われた。中学生が園児や友達に学び、大人は中学生に励まされて自らを省みる。